公益財団法人古泉財団

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2026年度助成対象者審査委員会

講評

 審査委員の皆さまには、年末年始のお忙しい中、丁寧かつ真摯なご審査を賜り、誠にありがとうございました。
 審査結果を拝見し、各研究課題に対して深く向き合い、真剣にご評価いただいたことがうかがえました。
 改めて厚く御礼申し上げます。
 また本日は、ご多忙のところご参集いただき、貴重なご意見を賜りましたことに、心より感謝申し上げます。
 
 本助成金は、研究の萌芽を育てることを目的とし、大学院生および助教の職位にある教員を中心に、特に女性や外国籍の研究者に研究の機会を提供することを主眼としてまいりました。
 あわせて、特定の大学に偏ることなく、できる限り多くの大学に研究資金が行き渡るよう配慮しながら、審査を行っております。
 
 今年度の申請状況を振り返りますと、本助成金の趣旨が各大学において着実に理解されつつあることを実感しております。
 特に、女性からの申請が継続的に増加している点が挙げられます。
 分野別に見ると、社会科学系では女性が約半数を占める一方、自然科学系では依然として3分の1程度にとどまっています。
 来年度は、全体として女性の申請が半数を超えることを期待しています。
 一方、外国籍研究者からの申請は全体の約2割にとどまりました。
 日本語による申請が難しい場合には、英文での研究計画書の提出も可能ですので、今後はより積極的な申請がなされることを期待しています。
 
 研究内容に目を向けますと、国際的な視点を取り入れた研究が増加してきました。
 今年度は、「インドネシアの生活習慣に関する研究」や「フランスワインの醸造に関する研究」、「日本の清酒とアジア各国の酒造りの比較研究」などが見られました。
 これらは、昨年度の本委員会での議論を踏まえ、各大学において研究テーマの工夫がなされた成果であると受け止めています。
 
 採択された研究を見ますと、時代性を捉えたテーマとして、社会科学系では「アクアポニックス」、「ジビエ」、「資源循環」に関する研究が評価されました。
 自然科学系では、「地域の特産品とその技術開発」、「知覚と咀嚼・摂食嚥下」、「栄養素や食事療法」に関する研究が評価されました。
 また、新しい着眼点を有する研究として、「食育のための栄養教諭の育成指標に関する研究」など、独創的なテーマも見られました。
 
 さらに分野別に申し上げますと、食料産業分野では、「豆腐の製造ロス削減に関する研究」が昨年に引き続き評価されました。
 食と健康の分野では、「アスリートの摂食障害に関する研究」が、従来は女性に限定されがちであったテーマを男女双方に広げた点が評価されました。
 食文化・食育の分野では、「嚥下障害の子どもを持つ家族に関する研究」が、当事者本人のみならず、その周囲の家族にまで視点を広げた点が評価されました。
 
 今年度は、特に優れた研究が多数寄せられたことから、代表理事と協議のうえ、予算枠を拡大し、より多くの研究者を支援することといたしました。
 助成対象者の皆さまには、本助成金を研究の出発点として、さらに大きな外部資金の獲得に挑戦しながら、研究を一層発展させ、将来へとつなげていただくことを期待しています。
 残念ながらすべての研究を採択することはできませんでしたが、次回に向けて、より質の高い申請となるよう改善を重ねていただければ幸いです。
 
 今年度は22名を採用し、これにより過去5年間での採用者数は95名となりました。
 来年度には、累計で100名を超える採用となる見込みです。
 制度開始から5年目を迎え、制度としてのバランスも整ってきたと考えており、本助成金が今後さらに発展していくことを願っています。
 
 最後に、本年度申請いただいた学生および教員の皆さま、ならびにご推薦をいただいた大学関係者の皆さまに、改めて感謝申し上げます。
 来年度も、質の高い研究のご推薦を心よりお待ちしております。
 以上をもちまして、本年度の講評といたします。
 ありがとうございました。

2026年1月28日
審査委員長  髙橋 姿

助成対象者一覧

(敬称略)

社会科学系(9名)
氏名 所属 研究題目
田上 陽菜 新潟食料農業大学                    
食料産業学部
食料産業学科4年
食品廃棄物利用型アクアポニックスシステムの開発および食育・環境教育への活用可能性について
小貫 和佳奈 新潟大学   
医歯学総合病院
助教
摂食嚥下障害児童と家族が外食を楽しむ機会提供に向けての検討
ANDI MUHAMMAD FIQRI MUSLIH DJAYA 新潟医療福祉大学
大学院医療福祉学研究科
健康科学専攻 博士後期課程
インドネシアの大学に在籍する医療系および非医療系の学生における肥満に関連する要因
片山 直幸 新潟医療福祉大学   
大学院医療福祉学研究科
医療福祉学専攻 博士後期課程
教員育成指標の分析による栄養教諭の資質能力構造の解明-学校給食を核とした食育と地域食文化継承を支える専門性の探求-
駒形 千夏 新潟大学   
経済科学部
助教
フランスのワイン醸造教育を通じた地域産業振興と人材育成-日本の酒類産業への応用可能性を探る-
馬 建 新潟食料農業大学 
食料産業学部
助教
新潟県における生ごみ資源循環システムの現状と自治体実装モデルの構築
上田 俊一 長岡造形大学 
大学院造形研究科
修士課程
ジビエ利用を志向した捕獲後支援機構の開発~ニホンジカ・イノシシによる被害現場での実装と検証を例に~
田辺 生子 長岡崇徳大学 
看護学部
講師
農村部在住超高齢者の食行動の現状と影響を及ぼす内容について
工藤 遥 開志専門職大学 
アニメ・マンガ学部
助教
「食玩フィギュアを通して見る消費者の収集心理」
自然科学系(13名)
氏名 所属 研究題目
山田 果歩 新潟大学                   
大学院医歯学総合研究科
口腔生命科学専攻 博士課程
若年低体重者におけるレトロネーザルアロマ知覚と咀嚼運動との関連
郎 笑杰 新潟食料農業大学 
大学院食料産業学研究科
博士後期課程
胎内市周辺に250年前から伝わる絶品の柿「伝内柿」の美味しさの解明と地域特産化のための技術開発
村井 匠 新潟大学   
大学院自然科学研究科
環境科学専攻 博士前期課程
豆乳を対象とした蛍光分光法に基づく11S/7Sグロブリン比の非破壊推定法の確立
大澤 友朗 新潟食料農業大学       
食料産業学部
食料産業学科3年
水田稲作における強害雑草コナギの防除基準と防除効果の空間的評価
小橋 有輝 新潟食料農業大学   
食料産業学部
助教
清酒のキャラクターが生じる製造要因の解明~東アジア醸造酒との比較を通じて~
藤井 楓恋 新潟医療福祉大学   
健康科学部
健康栄養学科4年
働く世代を対象とした尿中ナトカリ比の実態と栄養素および食品摂取量との関連
相澤 知里 新潟大学     
大学院医歯学総合研究科
口腔生命科学専攻 博士課程
米嚥下調整食の咀嚼嚥下時における舌筋活動を評価する
加藤 稚菜 新潟医療福祉大学       
健康科学部
助手
アスリートにおける摂食障害リスクの構造的解析~男女・多競技横断調査による予防基盤の構築~
長谷川 拓也 新潟県農業総合研究所   
園芸研究センター
研究員
トリコデルマ属菌資材によるセイヨウナシ褐色斑点病の発病抑制効果の検証
納富 智子 新潟医療福祉大学       
健康科学部
助教
慢性腎臓病患者における低たんぱく質食事療法が骨格筋量に与える影響に関する検討
田中 愛 新潟工科大学    
工学部
工学科3年
未利用資源乳酸発酵乳ホエーを活用した持続可能な微生物タンパク質の開発
上林 恵太 長岡技術科学大学    
技学研究院
助教
形状・重量・硬度が不定な自然作物を“やさしく”把持できるソフトグリッパの開発
水谷 悠太郎 新潟県立大学    
大学院健康栄養学研究科
健康栄養学専攻 修士課程
超低温長期貯蔵による珈琲豆の品質変化と食品開発への応用

意見

【概要】
 ・全体として、申請のレベルが上がってきた。
 ・今年の申請は、明らかにレベルが上がったと感じている。
 ・申請数が増加していること、また、多くの大学・研究機関から申請があることから、周知が行き届き、助成金の価値も上がっていることを示す成果だと思う。
 ・女性の申請が増加し、また、外国籍の方も3名採用されて、国際貢献としての広がりが出てきた。
 ・申請者の中で、性差、国籍等の多様性が確保できている点が素晴らしい。
 ・多彩な研究分野に加えて、留学生の申請も多くて良かった。
 ・留学生は、日本語で申請書を書くことが大変だと思うので、採用されれば喜ばれるはずだ。
 ・インドネシアは、肥満が社会問題化しているので、関連するテーマが出てきたことは必然だと思う。
 ・これまでなかった新しい観点の研究があって新鮮味があった。

【改善点】
 ・5年目なので、社会実装や具体的な成果に表れることを期待している。
 ・未だに助成金を旅費と学会参加費だけに使用する計画をしている申請者がいることは残念だ。
 ・単純に書類を書き慣れていないだけなのか、もう一度研究費をどう使うのか考えてもらいたい。
 ・学部学生が多く大変立派な申請だったが、本当に本人が作成したのか疑問があるものもあった。
 ・申請様式を意図的に改変した申請は、形式要件を満たさないものとして、評価対象外と判断するので注意していただきたい。
 ・教員が学生のための研究費を申請することは、この助成金の趣旨に反するので、自粛していただきたい。
 ・この助成金は、学生や若手研究者が主体的に研究資金を獲得することを重視している点を理解していただきたい。

【総括】
 ・本助成金の趣旨が各大学に理解されつつある印象を受けた。
 ・女性研究者の申請が着実に増加している。
 ・外国籍研究者の申請は2割程度にとどまっている。
 ・外国籍研究者で、日本語による申請が難しい場合は、英語での研究計画書の提出も可能とする。
 ・国際的な視点を取り入れた研究が増加している点が評価できる。
  (例:「インドネシアの生活習慣」、「フランスワインの醸造」、「日本の清酒とアジアの醸造酒の比較」)
 ・昨年度の本委員会の意見を踏まえ、各大学で研究テーマの工夫がなされた成果と受け止めている。
 ・採用された研究には、時代性を捉えたテーマが多く見られた。
  (社会科学系例:「アクアポニックス」、「ジビエ」、「資源循環」)
  (自然科学系例:「地域の特産品とその技術開発」、「知覚と咀嚼・摂食嚥下」、「栄養素や食事療法」)
 ・優れた研究が多数寄せられたことから、本年度は予算を拡大し、より多くの研究者を支援した。
 ・採用された研究者には、この助成金に頼るのではなく、さらに大きな外部資金に挑戦し、研究を発展させていくことを期待する。
 ・採用に至らなかった申請者は、次回に向けて、十分に質の高い申請となるよう改善を期待する。

代表理事挨拶

 皆さま、あけましておめでとうございます。
 本日、皆さまとお目にかかり、つつがなく新年を迎えることができましたことを、心よりうれしく思っております。

 2026年は丙午(ひのえうま)の年にあたり、私にとりましても節目となる年でございます。
 十干の「丙」、十二支の「午」とも陽の火を表します。
 この二つが重なる丙午は、60年に一度巡ってくる、非常に強いエネルギーを持つ年であるといわれております。
 午年にちなみ、馬のごとく振り返ることなく前を向き、着実に歩みを進めてまいりたいと考えております。

 さて、この60年に一度巡ってくる丙午の前回は、1966年にあたります。
 当時は、昭和後期の高度経済成長が本格化し、いわゆる「いざなぎ景気」のもと、日本経済が戦後の拡大を続け、世界からも大きな注目を集めていた時代でした。
 60年前がそのような活力に満ちた時代であったことを思いますと、本年もまた、未来につながる実り多い一年となることを期待せずにはいられません。

 古泉財団は、2021年10月1日より助成事業を開始し、本年度で5年目を迎えました。
 これまでの4年間で延べ73名を採用し、学生および若手研究者の皆さまの研究活動を支援してまいりました。
 本日の審査結果を受け、これより22名の助成対象者の皆さまの研究活動が本格的に始まります。
 本年採択された研究が、将来大きな成果へと発展していくことを、心より願っております。

 結びに、髙橋審査委員長をはじめ、審査委員の皆さまには、今後とも変わらぬご指導、ご助言を賜りますようお願い申し上げます。
 本日は誠にありがとうございました。

2026年1月28日
代表理事  古泉 肇